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現在、全妊娠の帝王切開率は20%を超えてきており、今後も増加が予測されます。以前(私が医師になった頃)は、前回帝王切開の妊婦さんで経腟分娩をしている人も多かったです。
帝王切開既往の方が経腟分娩に挑戦することをTOLAC(Trial of labor after cesarean delivery)と言い、成功した結果をVBAC(Vaginal birth after cesarean delivery)と言います。
TOLACのリスクは、とにかく子宮破裂です。0.2~0.7%、おおまかに0.5%とすると200例に1人子宮破裂の可能性があります。母体死亡率、新生児死亡率ともに約2倍帝王切開分娩よりも高くなってしまいます。
「産婦人科診療ガイドライン2020」では
上記すべてを満たしていない場合はすすめていません。
その他に、通常の経腟分娩とは違って陣痛促進剤の使用に気をつける必要や、分娩監視装置で慎重に赤ちゃんの様子を見守る必要があります。そして、少しでも異常があれば緊急帝王切開に切り替える必要があるため、手術の準備もして経腟分娩に挑戦することになります。
TOLACの成功率は70%と言われていますが、異常があって緊急帝王切開になった場合には超緊急となることもあり、赤ちゃんだけでなくお母さんの命の危険が出てきます。
私も医師になってから、そういう不幸な結果で救急搬送されてきた方を数人ではなく沢山診てきました。子宮を摘出したり、10リットル輸血したり、赤ちゃんよりお母さんの命を優先したりと様々な生死の瀬戸際の戦いになります。
私の妻も1人目が緊急帝王切開で分娩し合計3回帝王切開で分娩していますが、TOLACはしていません。外来で、「どうしても経腟分娩したいんです」と言われることがありますが、その際には「お勧めはしませんが、どうしてもするなら病院ですぐに子宮を取ったり全身麻酔をしたり超緊急対応できる所ですることを勧めます」とお伝えしています。
当院ではTOLACは行っておりません。元気なお母さんが元気な赤ちゃんを出産してもらうのが目標のため、200人に1人の不幸がおこらないように、予定帝王切開とさせていただいています。
院長 橋本