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「妊娠中に旅行に行っていいですか?」と聞かれます。コロナウイルス感染が拡がる前にはもっと多かったですが、今も時々聞かれます。妊娠16週には胎盤が完成し、つわりも落ち着き出血もしにくくなるため、俗に言う「安定期」は16週からになります。ただし、医学的に妊娠中に「安定期」という言葉はありません。どんな週数でも、様々なトラブルが起こる可能性はあります。
海外旅行にはさらに注意
以前は妊婦さんが妊娠中に海外で結婚式をする方も沢山いました。今はコロナ禍のため非常に少ないと思いますが、もし上記のような症状があった場合に海外の病院で診察や治療を受けると、日本の保険がきかないため、莫大な治療費を払うことになる可能性があります。海外旅行の際に旅行保険に入る方も多いと思いますが、妊娠22週以降の妊婦さんが加入し、妊娠に関係する症状に対応できる海外旅行保険は現在日本にはありません。海外の保険であれば探せばある程度です。妊娠22週未満であれば、妊娠初期症状について保険適応になる特約を付けることが出来る保険会社もありますが、通常は妊娠に伴う診療は保険支払い対象外と書いてあることが多いので気をつけてください。
観光地の近くの総合病院で働いていると、ゴールデンウイークや年末年始に出血や腹痛で救急車で運ばれてくる妊婦さんがよくいました。その際に入院が必要と説明をしても、「車で通りがかっただけなので」とか、「縁もゆかりもない所で入院なんて出来ません」とか大変でした。気持ちはとても分かるのですが、万が一早産になれば(週数にもよりますが)赤ちゃんに異常が起こる可能性があります。また旅行先で入院し、そのまま出産となり、赤ちゃんが早産のため長期間旅行先のNICUに入院となったこともありました。海外で結婚式をして性器出血ありながら受診せず、日本に帰って診察したら流産していたこともありました。ホテルで一人で産んで、産まれたのでどうしたらいいですかと電話してきた人もいました。産婦人科医は皆そんな経験をしているので、旅行をお勧めはしません。しかし、もし行くとしたら自己責任にはなりますが、出来る限りの対策として
ということは気をつけたほうがいいです。
院長 橋本