妊娠前より妊活としてサプリメントを内服していた方も、妊娠してそれを続けたほうが良いのか、やめたほうが良いのか迷うと思います。もちろん、食事でビタミン等を摂取できるのが一番ですが、つわりや腹部膨満などで充分な栄養摂取が困難であれば、サプリメントを利用することも悪くありません。特に妊娠中に重要とされているのは、葉酸・ビタミンD・カルシウム・鉄になります。
- 葉酸・・妊娠中は赤ちゃんの成長に伴い、葉酸要求量が増加します。不足すると高ホモシステイン血症という状態になり、赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎・脳瘤・無脳症など)の発症に関与すると考えられています。神経管は妊娠6週で完成するため、発症予防には妊娠1か月以上前からの葉酸接種(0.4mg/日)が推奨されています。葉酸の体の中での濃度安定には定期摂取から約8週間かかるため、早めの摂取開始が大事です。また妊娠中期・後期の葉酸必要量は約0.4mg/日とされており、食事で摂れていないと思う方にはサプリメント継続をお勧めします。
- 鉄・・妊娠中に健診で「貧血ですね。」と言われる方は多いと思います。そのほとんどは病名としては「鉄欠乏性貧血」になります。妊娠中は赤ちゃんへの鉄分供給や分娩時出血に備えて、お母さんの体内の血液量は大幅に増加します。その際、血液中の水分量は1.5倍近く増加するのに対して、赤血球・ヘモグロビンの増加量は少なく、濃度が低くなってしまいます。そのため、妊娠中には貧血が起こりやすくなり、より多くの鉄の摂取が求められます。特に妊娠中期以降は鉄の必要量が増えるので注意が必要です。「日本人の食事摂取基準」では、非妊娠時の鉄の摂取推奨量は6.5mg/日ですが、妊娠中期以降はそれに9.5mg/日を加えて摂取することが推奨されています。
- ビタミンD・・乳製品・果汁・魚油や日光により皮膚で産生され、カルシウム吸収を促進し、不足すると赤ちゃんの骨格形成や長期の成長に影響すると最近言われています。近年の妊婦さんは菜食主義や日光をあまり浴びない等のためビタミンD欠乏症の発生が多くなっています。ビタミンD欠乏症は妊娠高血圧腎症や切迫早産、妊娠糖尿病との関連も報告されています。ビタミンD摂取量は妊娠中7㎍/日、授乳中8㎍/日が必要目安です。食事等で不足すると思われる方は5㎍/日程度のサプリメントでの補充が理想です。
何事も摂りすぎはよくありません。代表的なものがビタミンAになります。ビタミンAは大事なビタミンですが、妊娠初期の摂りすぎは胎児の臓器形成に悪影響を与えます。ただし、胎児に悪影響を与える動物由来のレチノールは日本製のサプリメントにはほとんど使われていません。葉酸も0.4mg/日推奨ですが、約10倍量の5mg/日摂取するとむしろ悪影響があり、ビタミンDも5㎍/日推奨ですが、20倍量の100㎍/日以上は悪影響があります。
妊娠1か月以上前から葉酸摂取し、妊娠中は食事で肉・魚・野菜をまんべんなく摂取する。そして食事で葉酸・鉄分・ビタミンD等を摂れてないなぁと思う場合に、出来れば妊婦用のサプリメントを適当量摂取する。食事で足らない分をサプリメントで補う程度で、まずは食事から改善してみてください。