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赤ちゃんを産むためには、経腟分娩もしくは帝王切開の2択になります。どうしても経腟分娩が困難であればお腹から赤ちゃんが出てくる帝王切開分娩となります。帝王切開術をドイツ語でKaiserということから、私たち産婦人科医はカイザーと呼んでいることが多いです。しかし英語ではCesarean Sectionなので、カルテにはCSと書くことが多いです。
近年高齢妊娠が増加し、妊娠前からの合併症を持つ妊婦さんの増加や妊娠中の高血圧等により帝王切開数は全国的に増加しています。
帝王切開には、予め手術日程を決めておく「選択的帝王切開術」と、突然緊急で行う「緊急帝王切開術」があります。
①選択的(予定)帝王切開術の多くは、骨盤位 (逆子)や、過去に帝王切開術を行ったことがある(帝王切開既往)妊婦さんに行われます。
また頻度は下がりますが、胎盤の位置が低く出血リスクの高い前置胎盤や、双子・三つ子などの多胎の時にも施行します。
②緊急帝王切開術は
分娩が進行しない・・・分娩停止、児頭骨盤不均衡(骨盤が狭いor赤ちゃんが大きい)
赤ちゃんがしんどい・・・胎児機能不全(胎児モニターで胎児徐脈)
お母さんがしんどい・・・母体合併症の悪化(血圧上昇、臓器障害など)
帝王切開予定だった人が、予定よりも前に胎児機能不全に陥ったり、破水・陣発などの分娩徴候を認めた時にも緊急で行います。
どの程度の「緊急」なのかは、その時の状況によって変わります。超緊急で「今すぐしましょう」ということもあれば、一呼吸おいて御家族と話をして気持ちの整理をしてから手術室に向かうこともあり、ケースバイケースです。
帝王切開はどんな流れ?
通常の帝王切開は、次のような流れで行われます。
手術時間は30分程度。麻酔したり手術室での色々な確認作業があったりで、計1時間くらいは手術室にいることになります。
帝王切開術の流れ
触られている感覚は残りますが、痛みは全くありません。手術開始から赤ちゃんが出るまでは5~10分程度です。残りの20分は出血対応や綺麗に縫う時間になります。
帝王切開術の合併症は?
帝王切開術の合併症として、出血、周辺臓器の損傷(膀胱・直腸・尿管など)、赤ちゃんの損傷(擦り傷・切り傷)、赤ちゃんの一過性多呼吸、術後の腸管麻痺、腹腔内感染、創部離開、血栓塞栓症などが考えられます。さらに手術の時に使う薬でのアレルギーや、麻酔による神経損傷・血腫などのリスクもあります。こういった合併症は、緊急手術ほど起こりやすくなります。術後の腸管麻痺や血栓症予防のためには早期離床(翌日から頑張って動いていく)が効果的です。痛みがありますが、翌日から動いていくことが術後回復には重要です。
帝王切開は立派な分娩です
陣痛を耐え子宮口全開大後に経腟分娩あと一歩のところで帝王切開になってしまった方は勿論、骨盤位(逆子)で帝王切開分娩した方などが「私は普通のお産ができなかった…」と悲しんでいる場面に出会います。
しかし、帝王切開は立派なお産です。手術であっても、本当に大変な妊娠生活や手術を乗り越えて赤ちゃんが生まれます。帝王切開は、赤ちゃんにとっては経腟分娩よりもある意味楽なお産になります。狭い産道を頑張って通って頭の形を変形させたり、陣痛による子宮の収縮による圧迫を受ける必要がないです。仮に帝王切開になったとしても、全く自分を責めないで欲しいです。お腹の傷も、赤ちゃんへの愛情の結晶です。
私の妻も3回帝王切開しています。1人目が子宮口全開大後に赤ちゃんが降りてこない(児頭骨盤不均衡)ため緊急帝王切開分娩となったからです。3回お腹を開ける手術をする病気は他にあまりありません。妊娠したら、「またお腹切られるのか~」と言っていました。しかし、毎回赤ちゃんが可愛いので3回妊娠し、3人の子供もみんな元気です。赤ちゃんに会える立派な分娩ですから、予定の帝王切開の方も、緊急で帝王切開になった方も頑張りましょう。
院長 橋本