ご予約 お問い合わせ・分娩予約

お産の豆知識

tidbits

羊水

羊水

妊婦健診での毎回の超音波検査では、児の発育(赤ちゃんが正常に育っているか)、奇形がないか以外に、様々なものを診ています。今回は羊水についてまとめました。

妊娠10週頃から子宮内では胎児は、排尿→羊水増加→嚥下→羊水減少→排尿と、おしっこをしてそれを飲み込んで吸収し、またおしっこをしてと羊水の循環をしています。

この循環がおかしくなると羊水の異常が起こります。

ここからは当院での羊水の考え方です。妊婦健診の際に毎回超音波検査にて確認し、もし羊水量に異常を認めた場合には数日~1週間後に再検査し変化を確認します。

羊水が多い場合・・・急激な増加がなければ1~2週間毎に変化を観察していきます。急激な増加があれば緊急な分娩や処置が必要な可能性がありますが、ほとんどは切迫早産等の症状が出てくる以外は急な変化が起こることは少ない印象です。その間に、下記に書きますが、母体の妊娠糖尿病の有無の確認、胎児異常がないかの確認を行っていきます。原因不明が50~60%ですから、何も異常が見つからないことが多いです。胎児が大きい場合には原因不明の特発性が多く、胎児が小さい場合には染色体異常や奇形の可能性を考えて診ていきます。

羊水が少ない場合・・・羊水が多い時と異なり妊娠週数によって対応が異なります。もちろん破水の有無の確認は必須ですが、早産時期の羊水過少は数日~1週間後の再検査でも変化がなければ周産期センターでの管理がいいと思います。羊水が少ないと軽度の子宮収縮でも胎児徐脈(赤ちゃんがしんどくなる)可能性があり、胎児モニターや超音波検査で総合的に胎児健常性(元気かどうか)を評価する必要があります。37週以降であれば、その評価と子宮頸管熟化(産まれそうかどうか)の判断により、分娩誘発や帝王切開分娩の選択を相談していくことになります。

以下は「産婦人科ガイドライン産科編2020」「プリンシプル産婦人科学」をまとめたものです。

★羊水★

【羊水とは】

羊水は羊膜腔を満たす弱アルカリ性(pH8~9)の液体です。胎児や臍帯を浮遊させることで外部からの衝撃吸収や胎児の発育、運動、抗菌作用・肺や消化管の成熟・温度調節・分娩進行の補助など多岐にわたる役割があるとされています。羊水は絶えず入れ替わり、その量は厳密に調整されており、その調節機構が破綻すると羊水量異常(過多・過少)が起こります。

羊水の起源は胎児尿、卵膜からの母体血漿成分の流失、羊膜上皮などです。妊娠初期の羊水は透明ですが、妊娠の進行とともに胎児皮膚および羊膜から剥離した細胞が混在してくることから乳白色となってきます。妊娠早期では組成が細胞外液と同等であり、胎児皮膚、羊膜などからの血漿成分が主体と考えられています。妊娠20週頃を過ぎると、胎児皮膚の角化が進む一方、胎児腎機能が成熟化することによって尿量が増加し、その結果、羊水は低張となり、胎児尿と類似する組成となります。妊娠末期には胎児は1日400から500ml程度の羊水を嚥下して消化管より吸収し同量の尿を排泄します。羊水は胎児の生命現象を反映するとされています。

羊水量は妊娠30~32週頃にピークを迎え、その後は徐々に減少していきます。したがって妊娠30週頃に多めであっても、徐々に減少してくるようであれば正常胎児である可能性が考えられ、20週頃から多めであれば何らかの異常がある可能性が考えられます。

 

【羊水の異常】

羊水過多症

【定義】「妊娠時期に問わず、羊水800mlを超える場合を羊水過多と診断し、これに臨床的に何らかの自他覚症状を伴う場合を羊水過多症とする。」

【原因】最も多いのが原因不明の特発性(50~60%)。母体糖尿病(15%)。胎児奇形(13%)。多胎(5%)。頻度は軽度で慢性のものは全妊娠の0.5%、治療を要する急性で高度なものは0.1%以下です。

  1. 胎児側原因
  • 胎児の食道または十二指腸の狭窄または閉鎖
  • 胎児の奇形:脊椎破裂、無脳児、膀胱外反症、先天性横隔膜ヘルニア
  • 染色体異常:21トリソミー、18トリソミー
  • 一卵性双胎
  • 胎児尿産生過剰:胎児Bartter症候群、先天性腎性尿崩症
  1. 母体側原因:妊娠糖尿病(15%)
  2. 特発性(原因不明):約60%を占める。

 

【症状】腹部緊満感、呼吸困難、頻尿、悪心、嘔吐、下肢・外陰部の浮腫、静脈瘤、前期破水、分娩遷延、臍帯脱出、弛緩出血など

 

【検査】超音波断層法で、羊水腔の長さを測定し、最深羊水ポケット(the largest pocket)8㎝以上、羊水インデックスAFI(amniotic fluid index)20㎝以上を羊水過小とする。

 

  • 羊水過少症

【定義】「羊水が異常に少ないものをいう」。

【原因】不明なものが多い。

  • 母体側原因:妊娠高血圧症候群、抗リン脂質抗体症候群、薬剤内服(高血圧治療薬)
  • 胎児側原因:腎機能障害、腎形成異常、染色体異常、胎児発育不全、一卵性双胎
  • その他:破水、過期妊娠、胎盤異常、原因不明(最も多い)

【合併症】胎児に対する影響として、羊膜が胎児に癒着したり、羊膜索を形成する可能性があります。また、手足の弯曲、斜頸、肺低形成を伴いやすいです。分娩に際しても、臍帯圧迫を起こしやすく胎児機能不全の頻度が高いです。

 

【検査】超音波断層法で、羊水腔の長さが測定し、最深羊水ポケット(the largest pocket)2㎝以下、羊水インデックスAFI(amniotic fluid index)5㎝以下を羊水過小とします。

 

羊膜索症候群(amniotic band syndrome)とは?

羊水過少が早期に発症すると羊膜の一部は胎児に癒着し、これが伸びて紐状となることがあります。これを羊膜索と言います。この羊膜索が胎児の指趾などに巻きついて離断することがあります。比較的遅く起こると、胎児の皮膚は乾燥してなめし革様になり、内反足、四肢彎曲、脊椎彎曲、褥瘡、皮膚欠損などをみることがあります。

 

 

★羊水の計測方法★

①羊水深度法:
羊水腔の最大垂直深度で表します。

②羊水ポケット法:
羊水腔に最大何cm の直径の円が描けるかで測定します。

①②の正常値:2-8㎝

(日本産婦人科医会研修ノートNo.76)

③ 羊水インデックス(AFI = Amniotic Fluid Index)法:
臍部を中心に子宮腔を4分割した空間を想定し、おのおのの腔における最大深度値の総和を求めます。 ③の正常値:5~24cm

(日本産婦人科医会研修ノートNo.76)

 

院長 橋本

院長 橋本

ページ
トップへ
loading